ある日 ちいちゃな あいつはやってきた
まんまるでやらかくっていいにおい
そのひざの上は わたしの席
いつのまにか ながめるだけのベンチ席
いつまで控えてたって 順番はこない
「ちょっとまって」の「ちょっと」って
一体どれくらい?
既に変わったテレビにも気づかないくらい
かわいいみたいね ちいさなその手が
ママはこの世でたったひとりだけ
わかってる 心もひとつだと
わたしでいっぱいだったはずでしょう
夢中にさせるあいつのほっぺを噛みたい
あたたかな部屋 ふりだした雨
消えたテレビが 音をきかせた
ママの目が確かにわたしを見て
いつものいとしいカタチに細まる
ぎゅうっと抱きしめて彼女は言うの
「いつもごめんね。あなたを愛してる」
あいつの髪に顔をうめてみる
まあるい パステル
彼女と同じにおい
雨の音はもう聞こえなかった
ちいさな寝息に まぶたを閉じる